『パラサイト 半地下の家族』分岐なしバッドルート?!|映画感想※ネタバレあり

私はこういった社会派ドラマの映画、あっと思わす仕掛けのある映画が好き。

決して高くない温度の水、のような映画だ。はじめは手で触れると、明らかに冷たい。氷にもなりきらないし溶けきらない。

それが、いきなり、熱くなる。

すぐに、それは勘違いだったことに気づく。熱いと勘違いしたけれど、これは冷たすぎる、氷だ。氷はまたゆっくりと溶けて冷たい水に戻る。手は、冷たさで麻痺しているから、水が暖かく感じる。いずれにせよ、ひんやりした空気のまま映画は進む。

あらすじすら、知らない方が楽しめますね!

以下、ネタバレを気にせず感想を書きます。

あらすじ

キム一家は家族4人暮らし、職は無い。今日は、宅配ピザの箱を組み立てる内職をして食いつないだ。逃げたバイトの代わりに、ピザ屋のバイトを熱心に買って出るも、冷たくあしらわれてしまうほど職が無い。上の階の住人がwi-fiにパスワードをかけてしまったので携帯は繋がらない。光はほとんど入らない半地下の家だ。よく酔っ払いが小便をしてくる。ここで、どう希望を持って暮らせと?

小便男を怒鳴りつけたミニョクは、一家の息子・ギウの友人。さすが大学生だ、堂々としている。祖父からのプレゼントとして縁起のいい大きな石・ 山水景石(なんだそれ)を持ってやってきた。これは良い石だ。ミニョクは今度、留学へ行くと言う。受験を4回している”受験のプロ”、ギウに家庭教師代理という職を持ってきた。ミニョクは教えている娘が好きで、彼女が大学に合格したら付き合うが、「工学部の奴らより、ギウなら安心」という。

学歴を詐称するための書類は、ギウの妹・ギジョンが作ってくれた。彼女は美大志望だが、予備校へ通うお金は無い。ギウは、家庭教師先の奥様にも気に入られ、娘の家庭教師となった。そこは、社長のパク一家4人と1人の家政婦の暮らす豪邸。下の息子に手を焼いているの。絵の才能はあるようなのだけれども、ちっともじっとしていないで家庭教師は1ヶ月以内に辞めてしまうわ。ギウは、思いついた。奥さん。実は僕の従兄弟のクラスメイトが美大で・・・

感想

先が読めるようで、ハラハラしたり、想定外の展開にびっくりしたり、感情が忙しくて長さ(2時間ちょい)を感じなかったです。心がきゅ〜っとなり、これは純粋な「面白い映画」とは言えないけれど、「映画って面白い」と強く思いました。どんなに逆風が拭いていても、希望さえ捨てなければ報われる世、では無いのです。

貧乏が悪い。貧乏が悪いだけでは無いけれど、貧乏が悪い。キム一家だけが悪いのか?一人の警備員を雇うのに、大卒が500人応募する。これは盛っているのでしょうが・・・多かれ少なかれ、この問題は確実に韓国の社会問題なのですよね。キム一家だって、はじまりは普通に暮らしていきたかっただけです。彼らは、職だって探していました。やる気がないわけではないのに、不運にも社会から求められていませんでした。

では、パク一家はただの被害者?優雅で、穏やかで、優しい、良い人たちです。それはお金持ちだからです。解雇した従業員に対しても思いやりのある発言をしていました。余裕のあるお金持ちだから。悪い人には到底思えない。けれど自分の住む世界を疑わず、満ち足りているから「パンがなければ、ケーキを食べれば良いじゃない」というような無邪気さが感じられました。キム一家みたいな人々からすると、暴力的な無邪気さだったと思います。

家政婦の完地下夫妻は、完全にパク一家にパラサイトしていましたが、今以上を望まず穏やかに暮らしていたわけです。パク一家も誰も、傷ついてはいなかったんですよね。妻はしっかり家政婦業をしていたし、夫はぐうたらしていましたけど彼らは愛し合っていました。夫だってかつては台湾カステラ屋を真面目にやっていました。廃業してヤミ金に手を出し、地下堕ちしてしまいましたが、事業にチャレンジして失敗したやつが悪いのでしょうか。

本当、何を恨めば良いのよ?

これは、この社会情勢は、めちゃくちゃ盛っていますよね、極端な脚色ですよね?そうだと言って欲しい。誰が悪かったと言える?と思いました。やるせない。。。評価されて欲しい。見て感じて考えてほしい。

読めそうで読めていないハラハラお化け屋敷心理

パク一家がキャンプに行って留守にしている間、キム一家は忍び込んでドンチャン騒ぎをしていたわけですが、雨が降っている時点で「絶対パク一家帰ってきてバレるやつやん」って思ったんです。みんな、そう思うはずです。「まだか・・まだか・・ばか・・羽目を外しすぎだ・・・」って。この時点では、ゴミだめみたいなところで最低の生活をしていたキム一家がうまくやった後。そのスマートさが爽快で、ここではキム派なんですよね。賢い貧乏人、能天気な金持ちをしてやったり。多くを望まず慎ましく幸せになって欲しい。だから、羽目を外さないで・・・今に来るぞ・・・っていう、ハラハラ感はまるで驚かし系のお化け屋敷。「早くして・・・」ピーンポーン!

ほら〜なんか来た〜。え・・・?家政婦?家政婦戻ってきたー!しかもすごい変なテンションで!ボロボロの格好で張り付いたような笑顔でニコニコヘコヘコ。怖い。入れて〜お姉さん、地下室へ忘れ物をしたの・・ニコニコ。

死ぬやつやん?これ。死ぬやつよ?だって先代から家政婦としてこの家に仕えてきて、わけも分からず解雇されて。「私の死に場所はここ」とか決めてきたんだ、この家政婦。「何を忘れたの?」「・・・あなたも見る?」行っちゃだめ〜!殺される方?殺される方なのね???家政婦を解雇された恨みで、新しい家政婦を殺そうっていうのね?

違ったー!!!家政婦夫⭐︎登場。「お姉さんは良い人。この人に食べ物を運んで欲しい」神経が図太いな〜!みんな、生きることに貪欲というか、食べつなぐために何でもする感がすごいよね・・。このあたりは面白くなってきたああ!という感じ。映画を先読みする才能がなくてよかった〜

プルルルルルルル・・。「家に着いたらジャージャー麺を作って欲しいの、後8分で着くから。」やっときたー!パク一家帰ってきたー!ほらやっぱりー!で、ドタバタしている間に家政婦を階段に突き落としてからは一気に不穏。さっきまでのコミカルさはどこいった・・・?いや、ずっと救われなそうな不穏感はあったんだけどさ・・・

不穏だからと言って、簡単には逃しちゃくれない。いつ・・いつバレるの?!あっ・・もう!鋭い末っ子ダソンあたりに見つかっちゃうんじゃないの?逃れそうで逃げれない。早くして・・

とか思っていたら「キム運転手の匂いが耐え難い」とか言いながらおっぱじめる夫妻。あれは父ちゃんキツイよ・・。パク社長は、悪気があるわけじゃない。それは、消せない半地下の匂い。パク社長は金持ちだから、悪気のなさが逆にキツい。もうやめてあげて!キム一家のHPはゼロよ!

山水景石は何を意味するのか

小便男が再来したときに、ギウは石をかかえました。殺してやる。彼はすでに麻痺していたのでしょうか?

パク家から必死に脱出した後。洪水で自宅に帰ったギウは石を見つめて立ちすくみます。これだけは手離してはいけないものだと感じたのか。石が離れないんだ。

次の日、ギウは石を持って地下へ向かいます。決意したのです。もっとも、確実な方法。それは邪魔な人間を殺すことですから。

そしてギウは最後、自ら石を置きました。

あの石は、ケビンだったのでしょうか。ミニョクのような堂々たる大学生、家庭教師のケビンです。石が体から離れなかった時、石を抱えて歩き出した時、ギウはケビンとして生きていきたいと願ったのですかね。

ダソンはモールス信号が読めたという描写に意味はあったのか

ダソンがモールス信号で「助けて」というメッセージを読み取れたので、てっきり地下室がバレるのかと思いましたが、そうはなりませんでした。視聴者には印象づけられましたが。

ダヘの日記は読んだのか

ギウはダへの日記を持ち出して「ダへが大学に合格したら付き合う」とか言ってましたが、日記を読むシーンはありませんでした。その前から両思い・・・というか、イチャイチャはしていましたが。ミニョクともイチャイチャしてたんじゃないかな・・・?と思ってしまうので、日記には何が書かれているのか気になりました。

パク社長の奥様が可愛い

ミニョクは「奥様は若くて”シンプル”」だというように、すぐ騙されちゃう奥様可愛いです。運転手の車にパンツ落ちてたら、奥様との仲を疑いそうなもんですが、この奥様だったらそんなの隠し通せなそう。。それに、パク社長の心もきれいかよ〜、って思っていたんですが、これは、選民意識があったのかな。運転手と俺の車でセックスするやつは、俺や妻とは住む世界の違う低俗なやつに違いない、というものの見方なのかなあ、とか。

ギテクはなぜパク社長を刺した?

最後、ギテクはパク社長を刺しましたが、何故でしょうか?この少し前から、ギテクはなんか変な感じ。ギテクは昨夜「臭い」とか話されながら愛し合っているのを見せられてますからね・・。「それでも、奥様を愛してますものね」の繰り返しに、パク社長も何かねっとりした空気を感じたようで、厳しい口調で「これも仕事だと思うように」と諌めました。数日前に同じことを言われた時には、「まあね〜、hahaha」という感じだったのに。

パク社長から感じたのは無関心感です。人は良さそうですが、使用人たちのことを自分と同じ世界の人間だと思っていない節を感じました。性格の良い天竜人。パク社長は、当たり前のように救うべき命をジャッジしたんですよね。そんなパク社長のものの見方が許せなかったのではないでしょうか。

彼らの今後に救いはあるのか

「悪い夢から覚めた」かのような、人ごとのように爆笑していたギウ。イカれてしまったのか定かではありません。真面目に働いて、父が地下室に暮らすあの豪邸を購入する、と宣言して終わります。立ち上がったかのように見えますが、きっとどんなに努力しても豪邸は買えることはなさそうです。格差はそう埋まるもんじゃないです。

それならば、ギウは無期懲役です。ギテクは救われることなく、豪邸の地下牢獄で終身刑です。ギジョンの死刑と、あとチュンスクは生き地獄でしょうか。社会的には執行猶予付きで重い罪は被っていませんが、罰は与えられましたね。直接的な犯罪者はキム一家なのですが、それでもやはりキム一家だけが悪いのか?と考えてしまうんですよ。パク一家の無関心さも罪と言えるのでは?どうか生きて、乗り越えて、幸あらんことを。。

解説ブログが読みたくなる!

韓国の文化のバックグラウンドを知っていたらもっと面白いんだろうな・・・!映画を観たら考察ブログが読みたくなるような映画です、特に。こちらの記事、韓国にお住まいの方のものなので、韓国の社会情勢も感じられて非常におもしろかった〜〜〜!

参考 『パラサイト 半地下の家族』ネタバレ解説:メタファー、伏線13個を総まとめNO キムチ、No LIFE

お金持ちも、貧乏人の労働力に寄生しているっていうポン・ジュノ監督の引用に納得。

ダソンはモールス信号解けていなかったんですね!すっこ抜けていたけれど、北朝鮮ギャグ面白かったです。

まとめ

9割くらい感想を書き殴った後に、レビューサイトを覗いてみたら「起承転転転転転転転転結」と、表現している方がいて、天才・・・・と、超納得しました。展開が読めなくてハラハラするのは面白いけれど、心がきゅう〜っと苦しい。苦しくて、2度は観れないかもしれません。。

『パラサイト 半地下の家族』は、

  • 映画って面白い!が詰まっている映画!
  • 2時間あっという間
  • 映画館で観るとスリラー感がより楽しめる!
  • やるせなくて辛いけれど、人に勧めたくなる

「楽しい」「面白い」って言葉が使いにくいんだけれど、非常に観る価値ある映画だと感じました。

世界に関心を持って生きていきたい(戒め)

おわり!

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